岩渕想太 雑記

160字で書ききれないことや、日々思うこと。考えること。

混沌よ、こんにちは

名付けられてないものが好きだ。

枠からはみ出したものが好きだ。

 

っていうのも、ずっと言い続けてるけど、今の世の中を生きていると、どうやっても名付けられちゃうから。何かに括られちゃうから。 

人生の選択肢なんて無数にあって、その都度自分が行きたい方向へ舵を切るはずが、「こういう学校に行って、こういう企業に就職して、こういう風に結婚して、こういう老後を過ごそう」なんて呼びかけがあたかも普通のようになされる。

人の個性なんて一つの言葉じゃ言い表せないくらい多様なもののはずなのに、「○○くんはいじられキャラだよねー」なんて言って可能性を限定する。

「ダンスロック」じゃない音楽は「シティポップ」って言って片付けられる。自由にやりたい音楽やってるだけなのに「異端児」と呼ばれる。

何をやっても何かしらの枠組みの中に入れられる。高速化する情報の中で、ちょっとでも複雑なものは、簡単な名前を与えられ、安易に理解される。

 

オルタナティヴ」ってのはすごい言葉だ。日本語に訳すと「もう一つの」とか「代わりの」くらいの意味なんだけど、この言葉は、名付けることができないものを「呼ぶ」ことができる言葉だ。今あるものじゃない、「もう一つの」選択肢を肯定する言葉だ。

名付けられないものや、枠からはみ出したものを、無理に名付けたりジャンル分けせずとも、「オルタナティヴ」という言葉が拾ってくれる。そうしたものについて、生を与えてくれる。

だから俺は、オルタナティヴなものが好きだ。

 

さて、話が長くなったが、俺たちが6月7日にリリースする『Hello Chaos!!!!』は、心から自分で愛すことができる、オルタナティヴな作品になった。

 5曲全てが違う方向を向き、色んなジャンルに挑戦した上で、5曲全てが他の何者でもない、パノラマパナマタウンの音楽になったと思っている。

今回の作品を作り上げる上で、俺たちが一番心がけたことは、他の何者でもないパノラマパナマタウンのオリジナリティを探求することだった。過去の2枚、『SHINKAICHI』と『PROPOSE』はある意味で衝動的な、自分たちが持っている武器を4人それぞれが振り回すようなアルバムだった。と少なくとも俺は思っている。それが良いわけでも悪いわけでもないんだけど、今回のアルバムはこれまでとは全く違う作り方でできている。

それは、自分たちが持っている武器を一度見つめ直し、その中から、パノラマパナマタウンの音楽を形作るために、より強固にするために、何が必要かを4人で考える、という作り方だ。

過去の2作はレシピのない闇鍋を作っていたけど、今作はレシピのある闇鍋を作ったというイメージ。わかるかな?

 

おかげで、とってもヘンテコな、ケイオスなアルバムが完成した。前3曲と後2曲の世界観はびっくりするほど違うし、さっき言った通り5曲それぞれも全然違う。でも、5曲それぞれに長い時間と工夫をかけて「俺らっぽさ」が練りこまれている。

正直にいうと、まだまだ俺たちの音楽は完成してないし(「完成」なんてないんだけど)、発展途上だ。自分ららしさって何なんだろうってもがいている途中だ。

でも、だからこそ、一筋縄ではいかないゴツゴツしたアルバムができたと思ってる。そして、今自分たちができることの中で最高傑作だ。

だから、このアルバムを手に入れたら何回も聴いて、俺らがやろうとしてることを、俺ららしさを噛み締めてほしい。スっとは飲み込めないかもしれないけど、次第に飲み込めてくるはずだ。最初は、バラバラの5曲に見えるかもしれないけど、だんだんと1つのまとまりに見えてくるはずだ。

俺は自分の音源にしては珍しいくらい、このアルバムをリピートしている。そして、未だに一番好きな曲が変わり続けている。

 

「Chaos」とは「混沌」という意味だ。何にも名付けられないモヤモヤのことだ。

俺たちはこのアルバムを作り上げることで、この得体の知れない「Chaos」に出会うことができた。

枠からはみ出したものが好きだけど、枠からはみ出したものを作ろうとすると可能性は無限だ。オリジナリティの地平はどこまでも広がっている。

武道館には天井があるが、創作に天井はない。

これから起こるドキドキと、どこまでも続いていく表現の地平にこの言葉を捧げたい。

混沌よ、こんにちは。

 


パノラマパナマタウン / リバティーリバティー(MV)